院長ブログ
FGM female genital mutilation
2023年4月5日|院長ブログ
以前のブログで男の子の性器の皮を切る手術の話をしましたが、イスラム社会、ユダヤ教の社会では、広く行われている習慣で、
「割礼」とも呼ばれます。
世の中には女性版の「割礼」もあります。
女性器のクリトリスや小陰唇を切除してしまうもので、FGM(female genital mutilation)(女性性器切除)と呼ばれます。
中央~西アフリカの一部で現在でも行われています。
女性のこの習慣については、西側諸国の女性人権団体が、「すぐにやめるべき」と運動しています。
男性の割礼、FGMともその社会の中の通過儀礼として「誰もが経験すること」とされているので、なかなかやめさせるのが難しい。
今の日本に住む私たちからすれば、皮を切るなんて、なんて残酷、と思うかもしれませんが、
かつて日本でも、性器を手術したいと考える人が沢山いた時代があったのです。
私が産婦人科医になる、もっと前の時代。たぶん今から40年~50年くらい前のころ。
お産で子供を産むと、膣が広がってしまい、産後のセックスで性感が得られない、と考える人が、かつては多くいました。
そこで、お産をしたときに、医者に頼んで、「わざと膣が狭くなるように縫う」ことがかなり行われていたようです。
処女信仰のある時代には「処女膜再生術」という手術の方法もありました。
正確な資料は持ってませんが、私がかけだしの医者の頃、私に「膣を小さく塗ってください」という産婦がいました。
また、数年前に「尿がちゃんと出ない」と言って、私のところに診察を受けにきた60代の女性がいましたが、
尿道の出口のところで、左右の小陰唇が、縫い合わせられた状態になっている症例を見ました。
本当のところは教えてくれなかったのですが、産後に膣を狭くする目的で縫合したとしか考えられませんでした。
膣の皮を縫って狭くしたくらいでは、産後の性感が良くなることはなく、痛みがひどくなるだけなので、
この手術は時代とともに廃れていったと思われます。
時代が変われば考え方も変わります。
今普通と思っていることが、将来は普通でないかもしれない。
自分をしばっているものがローカル・ルールだったとわかると、生きるのが楽になることがあります。