院長ブログ
救急部(ER)に来る患者
2021年6月7日|院長ブログ
毎年5月と6月は、なるべく救急病院にかからないほうが良い。
救急対応をする慣れない研修医がたくさんいるから。
研修を始めたばかりで、診断にしろ、投薬にしろ、まだ慣れないので、ミスをする確率が高いのです。もちろん監督をする上級医師はいて、トラブルにならないようになってはいますが、深夜などは、研修医だけが対応することもあります。
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私が研修医だったころの話です。
救急患者の診察のときのこと、息が苦しいという中年男性が来た。
「はいっ、じゃあ胸の音を聞きますので背中を向けてください」
と私は丸椅子に座った中年男性の患者に告げ、聴診のため背中を向けさせた。
その瞬間、私はウッと息をのんだ。
背中ぜんたいに、ぱーっと、桜吹雪の刺青が描かれている・・・
「ちょっとくるしいわ、なんとかせえや」
「呼吸が苦しい? じゃ、じゃあ血液中の酸素を測りますから・・・」
パルスオキシメーターという指にはめる器具を取り出した。
「さあ、ちょっと指を貸してもらえますか。」
その瞬間、私はウッと息をのんだ。
指をつめていて、第一関節から先がない!
どうやってつけたらいいんだ!
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救急部にやってくる者で、酒飲みもまた困ります。
ある深夜、街の飲み屋で酒によってケンカになりケガをした中年男がやってきた。
自分は慶応大学の法学部出身だ、としきりにクダをまいていた。 (慶応出身の人には悪いが本当の話である)
「てめえ、どこの大学出身だあ?」
最初に応対した女性の研修医は地方国立大の出身であった。
悪い事に彼女も短気でケンカっ早かった。
「**大学よ、文句あるの?」
「なんだあ、**大学かあ、慶応のやつはいないのかあ」
「なんだとはなによ」
「**大学のくせに俺を診ようってのかあ、なんだとおこのアマ!」
売り言葉に買い言葉で、ケンカ状態になってきた。
横で別の患者を診察していた私は、仲裁に入った。
「おにいさん、ちょっと病院だから・・・」
私は(おとなしくしてくれよ)と言うつもりで、 背後から酔っ払いに近づいて、彼の両腕の自由が効かないようにガシッと ハガイじめにした・・・が
彼はするりと私の腕を抜けると、診察室の入り口に向かって走り出し
「キエーッ」と叫びながら、診察室のガラス戸にケリを入れた。
バリバリバリ!
ものすごい音を立てて、ガラス戸にヒビが入った。
騒ぎに気がついた事務の人がすぐに警察に電話してくれて 数分のうちにその酔っ払いは警官に御用となった。
救急部(ER)の仕事は危険度が高い。
私が研修医時代、 救急部から産婦人科に配属が変わって、ホっとしたことがあります。
産婦人科には、人を脅すヤーさんや、ぐでんぐでんの酔っ払いがいないのです。
ヤクザと酒飲みがいないだけ、産婦人科は幸せです。