院長ブログ
ボウコウはマズい
2021年3月14日|院長ブログ
最近 どういうわけか膀胱炎の人が増えています。婦人科にも排尿トラブルの相談はよくあります。
疲れていて、免疫力が低下すると尿道から細菌が侵入して膀胱炎をおこします。
男女比でいうと女性が多いのですが、尿道の長さが違うためと説明されています。
排尿痛、頻尿、血尿による尿の混濁などを認めれば診断がつき、通常抗生物質がよく効きます。
水分を多めに摂ることも治療には良いですし、民間療法ではクランベリージュースが効果があるとのエビデンスが出ています。
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さて、勤務医をしていた頃の話。
ある日病院に産婦人科の救急患者がやってきた。
ケガをして性器から出血しているという。
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患者は28歳の女性(結婚5年目)。 夫婦ゲンカをしていて、殴り合いとなり、夫に股間を思い切り蹴られたという。 蹴られたところが出血して止まらないと。
診察してみると、膀胱から尿の出てくる、外尿道口というオシッコの出口の部分から 膣にかけて、1センチ程度パックリ切れていた。 尿道周辺は血管の多いところなので、切れると結構出血する。
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縫合は簡単に終わったものの、瘢痕ができて後で排尿障害でも起こしたら まずい、と思ったので、導尿のバルーンを膀胱に留置して入院してもらった。
入院の際に、後からやってきた夫に 「膀胱からオシッコが出ないと、奥さんは尿毒症を起こして死んじゃうかもしれませんよ」 と、多少脅かして説明した。妻に暴行をはたらいたと思われるその夫は 一見したところマジメそうな人で、私の話を黙って聞いていた。
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股間を蹴られて出血を起こす、というからには、よっぽど狙って蹴ったんだろうか。 そこらへんは詳しく聞けなかった。
翌日になって、膀胱に留置したバルーンを抜いてみて、 排尿の状態も問題なさそうだったので彼女には退院してもらった。
抜糸のために一週間後に病院に来てもらったときに、 彼女はこう言った。
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「役所に離婚届を出してきました。」
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お父さん、やっぱりボウコウはいけない。