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院長ブログ

エコー写真とチャーシュー

妊婦健診をしている時はエコーの写真1枚を妊婦さんに渡すようにしています。

1枚しかくれないんですか

という人がいました。不満そうな顔です。

私がそうしている理由を話すと長いので、ここでは詳しく言いませんが、胎児の体の一部でもわかるのものがあったらあげて喜んでもらいたい、という私の気持ちと、一般の人はエコーの画像を見てもわからないので、沢山画像があってもムダだろう、という考えの妥協点です。

雑誌やウェブサイトで、胎児の顔がエコー写真と称して沢山出ているので、自分もほしいと思うと思います。その一方で、かなり条件がそろわないと一般の人がわかるような赤ちゃんの写真はとれません。

エコーばかり毎日やっていると、自分が新霊能力者になった気がします。私には「見える」のですが、一般の人には「見えない」のです。

見えないものを見ている。

おかげで、20年前には見過ごされていたような、胎児の異常が見つかるようになっています。

さて、私が勤務医として病院でバリバリ働いていた30代前半の頃の話です。

私はある患者の子宮筋腫の手術の主治医になりました。難しい手術で、子宮筋腫が尿管と膀胱を圧迫していて、ちょっと間違えると膀胱に穴が開いたり、骨盤からの出血が増えたり、尿管が切断される可能性のある難しい手術でした。子宮筋腫の手術といっても 簡単なのから難しいのまでいろいろあります。私の担当したのは難しい方で、手術前に何時間もCTの画像を眺めて、安全な方法を頭の中でイメージトレーニングし、いつもより緊張して手術に臨みました。普段より長い、2時間近くかけて、無事手術は終了。患者もとくに後遺症なく退院されました。

手術後、ある日、突然、意外なところでその患者と再会しました。

神戸駅の構内のラーメン屋で、私が一人でラーメンを食べていたら、ラーメン作っていたおばさんが、私の担当した子宮筋腫の患者でした。驚いた後で、笑顔と簡単な挨拶の後、

「あの時はお世話になりました」と言ってくれて、私もうれしかった。

ラーメンを私が注文すると、

「治療してくれたので心ばかりのお礼をつけさせてください」と言ってくれたので、私は、なにか”すごいものが出てくるのかと期待して待っていたら・・・

通常のラーメンのトッピングの具材、チャーシュー1枚のところ、3枚のチャーシューが盛ってありました。

チャーシュー2枚追加

「あ、ありがとう」と私は笑顔で言いましたが、心の中では

チャーシュー2枚かよ!

と思っていました。(患者の命を助けるような難度の高い手術をしたのに、チャーシューたったの2枚かあ?)

今思えば、アルバイトの店員だったと思いますが、彼女にその場でできる最大のことをしてくれたのだと思います。

 

「エコーの写真、一枚しかくれないんですかあ?」と不満そうな顔をしている妊婦を見ると、チャーシュー2枚で、不満を感じてしまった、昔の自分を思い出します。

 

 

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