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院長ブログ

下痢とローテク医療

暑い時期ですね。下痢も起こりやすい季節です。

下痢症を起こす病原体はいろいろありますが、数年前からロタウイルスのワクチンが予防接種として定期接種の対象になりました。

ロタウイルスは激しい下痢を起こし感染しやすいのが特徴。

しかし、死にいたることは通常ありません。

同じ下痢症でも、コレラ菌による下痢症状は、ハンパじゃありません。

私はかつてコレラによる下痢症を調べたことがあります。

一日20~30回の水のような下痢で、1日20リットル以上もの水分が出る。アジア型のコレラでは死亡率80%と高いのです。

下痢による死亡をどのように食い止めるか。

昔私が研修で訪れた「バングラデシュ国際下痢研究所」では、画期的な方法でこの対策をたてていました。

見たとき、私は20世紀の「ノーベル賞もの」の発見ではないか、と思いました。
(あまりにローテクだったので、受賞にならないでしょうが)

それは「コレラベッド」です。(図参照)

コレラベッド

コレラの患者が横たわる、ちょうどお尻の部分に、丸い穴があいている。

患者の排泄物は、その丸い穴を通って、下においてあるバケツにたまる。

バケツの中にたまった排泄物の量をみて、その人に必要な点滴の量を決める。

たとえば2リットルバケツに出ていたら、点滴は2リットル入れる。

という日本では考えられない(あまりに大ざっぱすぎて)やり方で、下痢症の治療をしていて、実はこれが、多くの患者の命を救っていたのです。

バングラデシュの旅は、いろいろのことを知らされましたが、産婦人科医として、感心したのが、尿蛋白の測り方。

妊娠中の健診が十分できない村では、村に医療従事者が健診に回ります。

アルコールランプの炎と試験管で尿蛋白の有無がわかるのです。

妊婦のおしっこを試験管に入れて炎で暖める。

尿に蛋白が出ている場合は、熱で固まって、白いものができるのです。

なんとローテクで効率がいい!

大ざっぱなので日本でこんな真似はできませんが、日本を離れていろいろなことに気づかされました。

バングラは今政権が変わって混乱していますが、あの人たちは今どうしているかなあ、と思い出したりします。

 

 

 

 

 

 

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