院長ブログ
阪神大震災と避妊の話
2022年1月20日|院長ブログ
避妊とは妊娠しないようにする方法のことです。コンドームやピルによる避妊の他にIUD(IUS)や手術による避妊法がありますが、相談を受けた際に
よく引き合いに出す私の経験談があります。
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26年前。それは阪神大震災が終わってちょうど1年くらい経ったときの話。
場所は神戸市内の病院の分娩室。
今までに3回出産の経験がある42歳の女性が、今まさに出産を終えたところでした。
「おめでとうございましたあー、男の子ですよ」
助産婦は生まれたばかりのベビーをママの方に見せてあげました。
すると、その女性はいきなり泣き出したのです。
うれしくて泣いているのです。
40過ぎの4人め出産のおばちゃんが、普通こんなうれし泣きするのでしょうか。
ママは泣きながらふところから一枚の写真を出した。
「あんたたちにも弟ができたのよ。よかったわねー。」
と写真に向かって声をかけている。
そしてまた泣いた。
見ると3人の元気そうな子供が写っている。
「子供さんですか。」と私
「ええ、でも今3人とも死んでしまっていないの。あの地震のとき、3人とも死んじゃったんです。」と母。
彼女は地震の被害が一番ひどい所に住んでいました。地震で家が全壊したそうです。
「ダンナと私は助かったの。私だってたんすの下敷きになって、3時間そのままだった。大怪我だったけど命は助かったわ。」
地震に子供全員の命を奪われて、自分たちだけ生き残ってしまった。
つらかっただろうに。
「年齢が心配だったけど、ダンナと相談してもう一度作ってみようって。そしたらできたのよ。」
「ごらん、あんた達の弟だよ。」
とうれし泣きをしていた40代の母を私は思い出します。
3人出産して、卵管結紮とか避妊を考えている人に、こういう私の経験も話をしています。