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院長ブログ

逆子と出産

おなかの中の赤ちゃんの位置で「逆子」というのを聞いたことあるでしょうか?

赤ちゃんは産まれる時に頭から出てくるので、出産前には赤ちゃんは頭が下になるのですが、お尻が下になっている赤ちゃんのことを逆子とか骨盤位と言い、医療現場では「ベッケン(ドイツ語由来)」とか「ブリーチ(英語)」とも呼びます。

骨盤位

なぜか最近うちで逆子の出産が多く、通常一カ月に1回あるかないかの逆子が、ここ一カ月で5件もありました。まったくの偶然で、逆子になりやすい原因などは知られていません。母体に原因があるわけでもない。3%から5%が妊娠の終わりまで逆子の状態と言われ、基本は帝王切開が勧められます。逆子体操はエビデンスがないと言われて久しく、条件が合えば私は外回転術も行っています。

帝王切開をしないとどうなるかというと、お尻や足から赤ちゃんが産まれてきます。だいたい正常に産まれますが、中には頭が最後にひっかかって、その後の発育に障害が出る赤ちゃんもいます。赤ちゃんが問題なく産まれる確率を100%に近づけるために、20世紀に入ってからは「逆子は帝王切開」が常識となりました。産科医の中でも私の世代が、逆子を経腟分娩(下から産む)させる技術を知っている最後の世代です。

長年産科の医者をしていると、信じられないような光景を目にすることが多々あります。

私が病院勤めの勤務医の頃、陣痛が来ていた妊婦を診察(内診)したところ、赤ちゃんの頭より先(膣の方)に手の拳(こぶし)が触れたことがあります。産道の中で手が先に出てきてしまうと、赤ちゃんの体が産道にひっかかって通れないので、帝王切開をしないと産まれない、というのが常識でした。

現場の助産師や若手のドクターが慌てて、「早く!緊急の手術だ!」と右往左往している中で、私は「いや待て、慌てるな、下から産まれるかもしれないからもうちょっと様子を見よう」と言いました。

その産婦が前回出産したときにすごく安産だった事、診察してみると産道が普通の人より広く、赤ちゃんもそのまま出て来れそう(な気がした)だったからです。一対多数の意見で手術をしたほうがいい、ということになり、その産婦は手術室に運ばれて行きましたが、なんと帝王切開を始める直前の手術台で、下から赤ちゃんが産まれました。元気な赤ちゃん。

助産師は「先生がそんなにノロノロしてるから、カイザー(帝王切開)間に合わなかったじゃないですか!」と激怒している一方、

私は「だから帝王切開しなくていいって言っただろう!」(結果論なのは知ってますが、私も意地になっていたので)

と普段は温厚なスタッフの間で大ゲンカになりました。

おそらく一番不安だったのは、出産する当の産婦で、「帝王切開しないと赤ちゃん死んじゃう」と言われて動揺したはずです。

後で本人が私に笑顔で語ってくれたのは「この子の名前、拳(けん)にしました。」ということでした。拳が先に出てきたからだそうです。

世の中を見回すと、これ以上に奇跡的な出産がいろいろあって、その最たるものはシャム双生児とか結合双生児と呼ばれるものです。

双子で、胴体や下半身がくっついて産まれてくる先天異常です。20世紀初頭から世界のあちこちで報告がありますが、帝王切開もできない時代、どうして下からあのような状態で産まれたのか、とても不思議です。

お産の世界は不思議なことがたくさんあります。

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