院長ブログ
心肺蘇生
2021年6月16日|院長ブログ
本日、うちのクリニックで新生児の蘇生法講習会を開きました。
新生児の蘇生が大人と違うのは、肺が「しぼんだ風船」の状態で生まれてくることです。
しぼんだ風船に空気を入れるためには、肺の中に圧力をかけて空気を送り込むことが必要。
新生児特有の蘇生プロトコールがあります。
大人の場合は、肺に「空気が入っている状態」なので、心臓の動きを再開させる方向が重視されます。
私が研修医になりたての頃には、夜間の救急で、成人の心肺蘇生を行ったことが、時々ありました。
駆け出しの未熟な頃は、「体力だけはある」研修医は、力のいる心臓マッサージを延々やらされました。汗かいて患者の胸を押し続けているだけでも、なにか医療に貢献している気がして、イヤではなかったです(上級医師は面倒くさがってやらない)。
さて、そのような研修医の生活の中で思い出深い症例があります。
寿司を食べていて、のどに詰まらせ、救急車で運ばれてきた80代の男性がいました。
気道に詰まっているものをとり、蘇生処置をすると、
なんと弱々しいながらも自発呼吸が出てきたではありませんか!
とりあえず、処置室から救急病棟へ移されました。
めったにあることではないのですが、時期を同じくして、今度はパンを食べていて
のどに詰まらせたという80代の男性が救急車で運ばれてきました。
なんとこの人も蘇生処置が成功して救急病棟へ移されることとなりました。
食べ物をのどに詰まらせてやってきた80代のおじいちゃん、ということで看護婦さん
は区別がつけにくくてとても困りました。
そこでこのおじいちゃん達に、スシを食べてのどを詰まらせた「スシさん」、パンを食べて詰まらせた「パンさん」とニックネームで呼ぶことにしたそうです。
ナースの申し送りのときには
「スシさんは血圧150の90で、プルス(心拍)は56、パンさんは瞳孔左右不動あり・・・」
などと言っていたらしい。
スシさんは幸運なことにその後順調に回復し、以前のように会話もできるようになり歩いて退院できることになりました。スシさんは人のいいおじいちゃんで、看護婦さんには結構ウケがよかったらしい。
退院の日には看護婦さん数人がおじいちゃんを玄関に見送りに行きました。
帰り際にこのおじいちゃんはこう言ったそうです。
「またスシ食いますわ。」