院長ブログ
清潔 不潔
2021年1月24日|院長ブログ
コロナ感染症がなかなか収束しないですね。
マスクしてさえいれば良い、と思っている人が増えてきたせいでしょうか。
換気と並んで重要なのは、接触の機会を減らすこと。
気が付かないうちに自分の顔に手が触れている、ことが以外にあるようです。
医療の現場では、手術や感染症の現場では、手洗いをして、手術着や予防衣を付けた後「余計なものにやたらと触ってはいけない」状態になります。
テレビのドラマで手術中に「汗拭いて」と言って助手に汗を拭かせる外科医がいますが、あればエラそうにしているわけではなくて、自分の顔を触ると手が不潔になるからです。ちなみに手術室で使う「不潔」とは「清潔(滅菌されて感染のリスクのない状態)ではない」という意味で、一般に使われる「汚染されている」という意味ではありません。
「ちょっと顔のここんとこ掻いて」
「ずれたメガネ直して」
なども手術中に自分の顔を触れない外科医が出すリクエストの一つ。
手術に加わっている医師で、操作をしていない手はどうしているかというと、滅菌されたドレープ(手術野を覆う布)に手をおろしていることが多い。
*
私が以前勤めていた大病院で、ある有名な外科医と同席して手術をする機会があった。
手術の腕はたしかに上手で、ずばずばと目標の臓器に達して、最小限の傷で患部を摘出する。
そして要求することも厳しい。
「そこ!不潔だから触るんじゃない!」
としかりつけながらも、てきぱきと手術の手は動いて、順調に手術が進んでいった。
緊張する手術の山場を越えて手術も終わりに近づいたときだ。
小さく
「イヤーン」
と若い女の声がした。
外科医の横にいる機械出し(メスや鉗子を出す役割をしている)の看護師の声。
鉗子を取りに手を伸ばすフリをして、そおっと若い看護婦の手を握ったのでした。
「先生!そんなとこ触らないで下さい!」
横にいた年配看護婦からたちまちヤジが上がった。
その外科医は手術は早いのですが女にも手が早かった。