院長ブログ
研修医の季節
2023年6月28日|院長ブログ
研修医の季節
毎年5月から6月には新人の研修医が病院の現場に配属される季節。
大学の教育で知識を詰め込んで卒業してくる若い医者たちですが、実技に関しては、ほとんど素人です。
この時期夜間の救急を受診する方は要注意。
もし私が「どこの病院がいいの?」と聞かれたとすると、研修医のいる大学病院よりも一般の民間病院へ行くことをお勧めします。
新人研修医は卒業した時点ではまだ点滴すらまともにできない者も多いです。
一発で点滴を入れることができる「ヒット率」を月別に比較したら、6月が一番低い成功率になると思います。
研修医の教育は、以前は「早く経験をつむため、できるだけ長い時間現場にいて、覚えなさい」という指導の仕方でしたが、最近は医師の働き方改革で、「定刻になったら帰ってください」に変わりました。
ワークライフバランス、十分休養を取りなさい、という方針から、私がかけだしの医者だった頃と大きく変わってしまいました。
研修医のQOLは大きく改善したはずですが、現場のベテランの医師からは苦情が出ることがあります。「大事な手術の途中なのに手を下ろして(手術着を脱いで)、サッサと帰ってしまう」「患者に対する情熱が感じられない」等々。ベテランと同じ働き方を強要できないのはどこの業界でも同じかもしれません。
若い医師は「ブラック」か「ホワイト」かという物差しでどの診療科に行くか決めたがりますが、苦労した分、得られるものが多いという点も気が付いてほしいと思います。
私は医学部を出て、近くの大きな病院で研修医をさせてもらいましたが、そこそこ給料も出て、勉強もできて良い環境でした。一次救急から三次救急まですべて受け入れる病院でしたので、それこそ、「魚の骨がのどにひっかかった」から「心臓が止まって運び込まれた」患者まで対応することを覚えました。
たまたまですが、私が研修医の頃に阪神大震災を経験し、普通の医者でも経験できないような貴重な経験を積むことができました。
お金を払ってもできないような経験ばかりです。
ヤクザの喧嘩で胸に包丁が刺さったまま夜間の救急に運ばれてきた患者
とか、
肛門にコケシがハマって抜けなくなった同性愛者の男性
とか、ヘアスプレー缶が爆発して、髪の毛がパンチパーマになった全身熱傷の美容師とか、
プライスレスな思い出ばかりです。