院長ブログ
コトバの壁
2021年3月18日|院長ブログ
先日夜間の緊急手術があり、外国出身で日本語の通じない人に手術をしました。
説明と同意が大変でした。
こちらから無理やり拝み倒して、手術をさせてもらった感があります。
それでも、ちょっと役に立ったのは「google 翻訳」。近年だんだん精度が上がってきているようです。この患者さん、普段は通訳の人が介在していないと、会話が成立しないのですが、
今回の緊急手術では「気合い」と「google翻訳」で、手遅れになる前に手術が開始できました。
スマホから翻訳された発音も聞けるのですが、緊急時にそぐわない、のんびりした音声で、ちょっとイラっとさせられました。まあいいけど。
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外国人でコミュニケーションが大変だったこと、数多くありますが、思い出深いものの一つは、私が研修医の頃出会ったロシア人の患者です。
神戸港の近くにある救急病院でしたが、ある晩「血を吐いた」というロシア人の船員が来ました。
付き添いの人の片言の英語の説明からすると、胃潰瘍で出血のよう。本人は日本語全くわかりません。
診断のためには直腸診(肛門から指を入れる検査)をして便潜血の有無をみる。
コトバの通じない人に直腸診!
さて、困った。
「ズボンとパンツを脱いでください。」
「ベッドに横たわり、膝をかかえるようにして丸くなってください」
「私が指を入れますから肛門の括約筋をゆるめてください」
これだけの内容を、コトバのわからないロシア人船員のオジサンに説明するのです。
私はパントマイムで彼にメッセージを伝えることにしました。
私は診察の椅子から立ち上がり(白衣を着ていた)、
ズボンのベルトをゆるめ、ズボンとパンツを脱ぐジェスチャーをした。
(わかった?)と目くばせすると、ロシア人はウンウンとうなずいてくれた。
ピンポーン!
そばのベッドに自分が横たわって、膝を丸くするジェスチャー。
ピンポーン!
横で看護師がクスクス笑っていましたが、そんなことには構っていられません。
最後は難関だった。
「肛門に指を入れます」のジェスチャー。
こういう非常事態では気合でなんとか通じるもので、私が執拗に人差し指を立てて「カンチョー!」のポーズをすると、最後にはこっくりうなずいてくれた。
結果は陽性。胃潰瘍からの出血が確認され、ロシア人患者は入院して胃潰瘍の治療をうけることになったのでした。
スマホの翻訳アプリ、今後の活躍が期待されます。