院長ブログ
水の中
2021年8月15日|院長ブログ
人間は、生まれる前はみんな水の中で生きていた。
そういうことを思い出させてくれるのは、赤ちゃんが生まれるときに「破水」といって水が出る時です。
人間は水の中から生まれてくるのです。
だから水の中にいた記憶というのを、誰しも持っているはずですが、覚えている人はいません。
「おなかの中にいた頃の記憶を、子供が話してくれたことがあった」
という話を、妊婦さんから聞くことがあります。子供が2歳くらいになって話ができるようになった時期に一回だけ語った、という事例がありますが、その時期の子供の言うことなので真偽のほどはあきらかではありません。かつては私も信じていましたが、話し始めの子供って、かなり意味不明の発言をするので、大人が勝手な解釈を入れている可能性があることに気づきました。
胎教といって、生まれる前の赤ちゃんにいい音楽を聞かせると生まれた後、頭の良い子どもになる、と一時信じられていた時期もありました。実際のところ聴覚は24週頃から発達してきますが、水の中で音を聞いているので、私たちが聞こえているようには音楽は聞こえていないはずです。ただ、父親の声には出生後も反応するようで、話のリズムやイントネーションは伝わっているかもしれません。
胎児の心拍のモニタで、赤ちゃんがストレスを受けているかどうか、大雑把に知ることはできます。
ただし、出てくる前に苦しかったのか、楽しかったのか、赤ちゃんはしゃべってくれない。
激しく感じられる胎動も、とくに問題はないことが知られています。むしろ全く胎動を感じないのは問題ありとされます。
この分野、これから技術が進歩してわかるといいのになと思います。
オリンピックの水泳でアーティスティックスイミング(旧シンクロ)をみていると、水面上に出る美しい腕や足が見える一方で
水面下で沈まないよう必死にもがいている様子が見えてしまいます。ふだん仕事中、顔で笑って、心で泣いている私のようです。
個人的には、興ざめですが、赤ちゃんが水の中でどうしているのか、見える方法があればいいのにと思います。
オリンピックでアーティスティック・スイミングの競技が行われていたときに、ある方がお産になりました。
「おなかの中でよく動いていたんです」
とお産した人が言うので
「水泳の練習してたんでしょう」
と私は説明しました。
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