院長ブログ
ゴリラの帝王切開
2023年2月19日|院長ブログ
産科の手術といえば帝王切開は知っていますね。
もしかしたら、帝王切開は人だけにするもの、と思われているかもしれませんが、
帝王切開は牛や豚、犬でも行います。
何年か前に、イギリスの動物園でゴリラの赤ちゃんが帝王切開で生まれた、というニュースがありました。
ただし執刀したのは産婦人科の医者だったとか。
ヒトを診る医者がゴリラの帝王切開をするとしたら稀なこと。
他の動物と違って、ゴリラは体が人間と似ているので、帝王切開じたいはやりやすいかもしれない。
帝王切開はよく行われる手術です。対象を選んで、油断しなければ、安全に行うことができます。
ちょっと知っている人は「シーザーの時代からあった手術(cesarean section)だから、昔からよく行われていたんだね」
という人もいますが、俗説らしい。
近世まで帝王切開による死亡率は高く、1860年代に術後死亡率は85~92%だったという記録があります。
1882年にSangerという人が子宮の傷を縫うことを提唱して、術後死亡率は50%前後になりました。
帝王切開はつい最近まで「放っておけばたぶん死ぬ」人だけにたいして行われていたのです。
いろいろな理由で帝王切開の分娩の割合は上昇しています。
日本ではまだ、医学的な必要性がある人だけに帝王切開を勧めていますが、
世界で帝王切開率が最も高い(50%近く)のブラジルをはじめとして、アメリカ、中国でも
「お産の痛みを感じなくて済むから」
「帝王切開のお産は”高級なお産”と考えられているから」
「帝王切開をすることによって、利益を得たいという病院側のインセンティブ(動機)がある」
「医者が訴訟になるリスクを回避するため」
「産後の膣の締まりが保たれるから、性感を損なわない」
「運勢の良い日に産ませたい」
というような要因があって、広く行われるようになっています。
経膣分娩を良しとする日本の文化は、先進国の中ではかなり特異な方です。
さて私も、動物を使って手術をしたことがあります。
内視鏡の練習のために、生きたブタを使わせてもらったことがあります
(1回40万円!自分の持ち出しはありませんでしたが)
豚の皮膚は人間より柔らかく、子宮は人間と違って二つあります。
カメラで見ながら、電気メスで腹膜を焼いていると・・・
焼き豚の匂いがしました。