院長ブログ
貧血オリンピック
2021年7月22日|院長ブログ
とうとうやることになった東京オリンピック。
アスリートたちのが 能力の限界まで挑戦する姿は美しいです
期待の選手は自己最高を超えるか
100m陸上は9.6秒の壁をやぶれるか・・・
*
さて、記録に挑戦しているわけではないのに、
たびたび「新記録」が出て
私をびっくりさせるものがあります。
それは貧血
女性には貧血が多いですが、貧血の度合いもさまざま
中には、よくここまで耐えたな、と思えるくらい低いヘモグロビン値の人がいます。
正常の女性ではこのヘモグロビンの値が11.5-15g/dl。
妊娠すると「相対的な」貧血になり 10 程度
生理の時だけ出血が多く、長年かけて体が慣れていくと
ヘモグロビンが 8 程度の貧血があっても普通に生活している人は多いです。
ただ、皮膚が黄色くみえて、素人目からも明らかな貧血とわかるようになります。
子宮筋腫などの方に多いです。
ヘモグロビンの値が低い状態になると、心臓に負担がかかってくるので、心臓が大きくなる。足がむくんでくる。
病院に行くのがイヤで、ガマンにガマンを重ねた挙げ句、意識を失って倒れて救急車で運ばれてくる人も時々いました。
*
私が医者になって駆け出しの頃
血の濃さをはかるとヘモグロビンの値が 5 という患者がいて、あまり病院に来てくれない人でした。
なんで病院に来ないのか聞いたのですが。
毎回出血は多いのですが、病院がキライなので行かなかったそうです。
その数年後にヘモグロビン 3.5 で外来に歩いてきた人がいて、私は驚き、
10年ほど前、ヘモグロビン値 2.3 という人がいました。
全身皮膚の色はまっ黄色。
他の病院で子宮筋腫と診断されたという彼女は
なんと自分の足で歩いて病院にやってきました。
歩いているなんて「奇跡の人」と思われました。普通なら体を動かしただけで心臓バクバクです。
「どこ(の病院)に行ってもすぐ入院をしろと言われたんですけど・・・」
当然です。こんな人は首根っこをとっつかまえても入院させなければいけません。
「でも入院できないんで・・・」
入院はイヤだと言います。面倒を見ている子供がいると。
その時は、とりあえずこれ以上出血が起こらないような薬剤の注射をした後で、
来週必ず入院してくださいよ、と念を押しました。
しかし。 その後入院の日になっても彼女は現れませんでした。
どこかで倒れたかもしれない。 どうなったか知りません。
数年後の話
自宅で動けなくなって救急車で私の病院に運ばれてきた別の患者さんは
ヘモグロビンの値 1.7 でした。 (もう、どうにでもして、というあきらめ顔でした)
これ以下の値を私はまだ目にしていませんが、
冗談まじりに話ができるのは、重症貧血でも治療で劇的に改善するからです。
(文献では、Hb3を切ると心停止の事例が多くなります)
病院で、輸血、鉄剤投与により、貧血を治せば、皆さん
「嘘みたい」に自覚症状が改善します。
元気に歩いて退院されます。
医者をやっていると、年々記録が更新されていくのでビックリします。