院長ブログ
夏の恐怖体験
2023年8月3日|院長ブログ
夏になれば思い出す~
怖い体験はありませんか?
この季節になると思い出す、恐怖の体験があります。
医者になって数年目、新しい病院に赴任したばかりの時
手術をすることになっていました。
手術室に入る前には手を洗って、手を無菌的にして入室します。
手を洗った後手術室に入ろうとすると
「先生、ちょっと待って!」
声とともに、物陰からいきなり手術部のナースが私を追いかけて来ました。
彼女は帽子とマスクで顔を隠していて、メガネの奥には神経質そうな目が。
ナースの手には、寒天培地の入ったシャーレ(プラスチックの円盤状の容器)。
病院の感染対策部がやっているのですが
手洗いの後で、指に残っている菌がないか抜き打ちの検査でした。
クルマの酒気帯び運転の取り締まりをするようなもんでしょうか。
「爪を立ててぐっと指を押し込んでください」
と有無を言わさず、シャーレを差し出されました。
私は羊羹のようなプニっとした寒天培地に、指先を押し付ける。
仮面ライダーが敵のショッカーをやっつけて、帰宅途中に
路地裏でいきなりショッカーに不意打ちを受けたような、そんな気分でした。
イソジン(消毒液)で皮膚が赤くなるくらいゴシゴシ洗いして、ちゃんと手洗いしているつもりでも、
ちょっと手ぬるいと間違いなくどっかに菌が残ります。
普通の石鹸でどんなに念入りに洗っても、その程度では必ず菌が検出されます。
以前に一回だけこの検査で引っかかったことがありました。
後でこっそり上司に呼ばれて
「お前、菌が検出されたからちゃんと今度から手洗いしろよ」
とたしなめられました。
菌が2,3個検出されても手術用の手袋が破れない限り感染しませんし、
実際の手術にはほとんど影響ありませんが
手術医としては不名誉なことです。
その夜、帽子とマスクで目だけ出したオペ場のナースが
寒天培地のシャーレを持って追いかけてくるところを想像して うなされました。
夏の夜の怪談にも匹敵する恐さでした。