院長ブログ
冬の富士
2023年1月14日|院長ブログ
冬は空気が澄んで、遠くのものがよく見える。
富士山も、ふだんは見えない遠距離でも冬になると見えるのだと、テレビで言ってました。
最も西からの記録で、京都から見えたとか。
産婦人科で仕事をしていると、4か月くらいから、おなかの赤ちゃんが「男か女かわかりますか」とよく聞かれます。
「上り電車にのって見える富士山の見え方」にたとえて説明しています。
上りの電車に乗って愛知県から静岡に入ってくると、はじめははっきりわかりませんが、そのうち富士山がわかるようになってきます。
妊娠4か月で、性別を当てるのは、浜松や磐田あたりにいて、富士山を特定するようなものです。
わからないことが多い。
妊娠5か月だと掛川市から富士山を探している状態、妊娠7か月だと静岡市、9か月だと富士市くらいかな。
時間とともに、はっきり見えてくるものです。
「静岡県民はみんな、毎日富士山を見て暮らしている」と思っている他県の人がいるかもしれません。
「妊娠5か月になるとみんな性別がはっきりわかる」と思っておられる妊婦の方がいるようです。
妊婦の知りたいことを伝えてあげたい気持ちは私にもありますが、間違ったことを伝えることはできません。
胎児の異常のスクリーニングがエコーの本来の目的。
こういう事例がありました。
お産は喜びで満ちた瞬間のはずですが、お産の後、怒り出した人がいたのです。
昔、ある病院で分娩の立ち合いをしていたときのこと。
いつものように無事出産がおわり、助産婦さんと私は
「おめでとうございましたあー、男の子ねー、はあい」
とママになった人にベビーを見せました。
すると、そのお母さんはいきなり火のついたように怒り出したのです。
「あれ!なんてことおおっ!」
分娩台の上で仰向けになったままプリプリ怒り出したお母さんに 一瞬私たちは何事が起こったのか、とたじろぎました。
聞いてみるとこの妊婦さんは妊婦健診中に 私と別の担当ドクターから 「女の子じゃないかなー」 と言われていたそうです。
この人はうれしくて、女の子向けのベビー用品を山のように買い込みました。
周りの人にも「女の子よー」と伝えていたようです。
それが生まれてみたら男の子。
「どーすんのよ! 責任とってよ。」と怒りが収まりません。
ふつう、無事に自分の子が生まれればハッピーになりますが
怒りだしたママを見たのははじめてでした。
医者としてあまりいい加減なことを言ってはいけないと、身にしみて感じました。