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院長ブログ

「平成」の始まり

遺体の解剖実習をしている時でした。

元号が「昭和」から「平成」に変わったことを知ったのは。

昭和64年が終わった時のこと、鮮明に覚えています。

30年前なのに。

医学生だった私は、昭和天皇が「慢性膵炎」「黄疸」の治療をしている報道を聞きながら、「どこに膵臓があるんだ」と考えながら解剖実習をしてました。膵臓はわかりにくい場所にあります。

昭和が1月初めでいきなり終わってしまったこともビックリでしたが、すい臓がどこにあって、膵管の閉塞でどういう症状を起こすのか、天皇の死(崩御)によってより詳しくわかりました。

解剖実習は医学生にとって、通過儀礼でもありますが、かなり特殊な授業です。5~6人の学生が一つのグループになって、ホルマリン漬けの献体を解剖して、神経や血管や筋肉を同定していく作業です。

脂肪の中に埋まっている神経を同定するのは、遺跡を発掘する作業と同じです。緻密で、辛気臭い作業です。

噂されていた通り、解剖の初日は倒れる学生も出ました。

噂されていた通りでなかったことは「解剖実習を始めると肉料理を見ると気持ち悪くて食べられなくなる」と言われていましたが、大丈夫でした。私は実習中も牛丼やスクランブルエッグも食べました。ちなみに卵の色はホルマリンで固定された脂肪とそっくりです。

今の医学生は、コンピューターで描かれた人体の3DのCGが良く出来ているので、解剖しなくても体の構造をイメージしやすいのですが、私たちの時代のようにホルマリン臭に満ちた、暗く冷たい実習室で解剖した経験がなければわからないこともあります。

解剖の時に着る作業着はスクラブ(半そでのダボダボしたシャツ)でしたが、男子学生も女子学生も同じ格好です。

体育会系の人(ラグビー部テニス部の人とか)はさっさと終わって練習に行ってしまうのですが、残っている学生には「お先に失礼します」と会釈していくのが通例でした。

隣のグループの女子で、美人と評判の学生がいたのですが、先に帰るときに、仲間にお辞儀をする。スクラブの胸元からおっぱいが見える、と喜んでいた男がいました。

そんな、くだらないことまでよく覚えています。

その女子学生は今、産婦人科の開業医になっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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