院長ブログ
卵巣のう腫
2021年9月19日|院長ブログ
皮様嚢腫(ひようのうしゅ)と呼ばれるタイプの卵巣嚢腫は比較的若い人に多くて、偶然見つかることが多いです。
ちなみに「嚢(のう)」は「袋」を意味していて、土嚢(どのう)などと同じ語源です。たまに患者さんが「らんそう脳しゅ」と問診票に書いていることがありますが誤りです。
2年ほど前、18歳の女性がお腹の圧迫感があるということでクリニックにやってきました。
この人もはじめは腸の病気ではないかと思い内科を受診していた。
婦人科の病気とは考えていなかったらしい。
「12㎝ぐらいの大きさの卵巣嚢腫と思われる病変がありますねえ。」
エコーの画像を眺めながら私が言うと
彼女は、そんなのあるはずがない、という表情で写真を凝視していた。
横にいたお母さんが、うなづいていろいろ聞いてくるのだが、
当の本人は、他人事のように、目をそらして、知らん顔をしている。
(手術をすれば簡単に取れるのに)と私は思った。
「手術しておいたほうがいいんじゃないでしょうかねえ」
私はチラチラと、女の子の表情を伺うが、彼女は表情を硬くして、(体に指一本でも触らせるもんか)とでもいいたげな表情で、黙っている。
人生の中で一番異性を意識する時期で、他人に体を触れられるなんてとんでもない、ましてやメスで皮膚に傷をつけられるなんてもってのほか、という心境だろう。
「でも放っておいてもまだ大きくなるでしょうし、お腹の張った症状は消えませんよ。破裂して腹膜炎という可能性もあります。」
私も手術を拒否する人に対して、押し付けるつもりはないので、
「最終的にはご本人の判断にお任せしますけどね」
と付け加えたが、本人はどうも踏み切れない気持ちの様子。
(うーむ。困ったなあ・・・)
私は奥の手を使った。
「手術をすれば、 痩せるし。」
と、ぼそっと私はつぶやいた。
その瞬間、彼女は目を大きく開き、身を乗り出して、言いました。
「手術やります。」