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院長ブログ

喜びと悲しみ

喜びと悲しみは時として一度にやってくる。

空気の澄んだ、11月のある日 (といっても昔私が県外の病院に勤めていた昔の頃)、

疲れた顔をした、30代後半の女性が。私の診察室にやってきました。

「生理がない、妊娠したかもしれない」とのことでした。

超音波、尿の検査でたしかに妊娠していました。

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「先生、本当に妊娠、ですか?」と信じられない顔をしている彼女。

「ええ、確実に妊娠してますよ」と私。

そして、おめでとうございます、と言いかけて問診票を見た時、喉元まで出かかった言葉を引っ込めました。

彼女にはすでに4人の子供がおり、現在離婚していると書かれている。

この人が出産を希望していないのは明らか。

ああ、この人は中絶を希望しているんだな、とピンときた。

 

「先生、間違いなく妊娠ですよね」と念を押す彼女

「ええ、妊娠していることは確実ですよ」

何がそんなに不思議なんだ、と思っていると

「先生、ちょっと待ってね」

と言って彼女はやおら診察室の外へ出て行き

50歳くらいの、人生にくたびれた感のある男性を引っ張ってきた。

聞けば、この男は現在つきあっているボーイフレンドだという。

(オジサン、オバサンになってもボーイフレンド、ガールフレンドと言うんだなあ)

「先生、本当に妊娠してるんすかあ?」

びっくりした様子で、中年男は私に聞いた。

どうやらこの男が彼女を妊娠させたらしい。

彼女としては、この男に、妊娠した事実を見せて、責任をとってもらおうと思っているらしい。

しかし、この男のオドロキは普通ではなかった。

「せっ先生、それってホントですかあ?」

「どの医者が見ても、同じ事を言うでしょうね、彼女は妊娠されてますよ。」と私

うそだ!といわんばかりに彼はかぶりを振った。

「そんなことあるはずない!」

私は淡々と説明した。

「彼女の生理の日から計算すると、排卵のあった日はカレンダーのこのあたりです。この日前後3日以内にセックスしませんでした?」

普段の生理の周期が規則正しく訪れる人なら、大体の排卵日は予測できる。

「たしかに先生、おっしゃるとおり、その日でしたけど。」

中年男はそれでも信じられない、という風だった。

「でしょう?あなたとの性行為で妊娠した可能性が高いですね。」

「でもねえ、先生」

男は私に打ち明けた。

「わしは若い頃”おたふく風邪”にかかりまして。それ以来、子供ができないって言われてたんです」。

物心ついて30数年、私あっちこっちでいろんな女とセックスしてきましたけど

今まで一度も妊娠したことなかったですよ。避妊しなくても。」

Mumps(おたふく風邪)にかかると無精子症になると言われている。

正確には精液検査をしないとわからないが、とにかく今回の妊娠は彼が原因であることは明らかなようだ。

彼と彼女の間で今にもケンカがはじまりそうな、

緊張感のある狭い診察室。

妊娠させられた中年女と、私の背後の看護師はあきれた表情で男を見ていた。

しかし私は、中年男の表情の中に一筋の喜びを見た。

彼の喜びにあふれた心の声が聞こえた気がした。

(自分にも子供を作る能力があったんだ!)

という男としての喜びの声。
診察室はまさに、ドラマ”人間模様”。

 

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