院長ブログ
妊婦加算
2018年12月2日|院長ブログ
「妊娠していると伝えたら料金が余計にかかった」と、最近のニュースで取り上げられた妊婦加算。
保険証を使った治療は値段が決められているのですが、この春から妊娠している人は(3割負担として)約230円支払が増えています。
「妊婦加算」という保険診療での新しいルールで、病院側としては患者が妊婦であれば上乗せ料金を徴収できるということです。なんでこんなルールが決まったのか、最初は私もよくわかりませんでした。
「中耳炎で耳鼻科にかかったら、妊婦なので薬出せないといわれた」
「風邪で内科に薬をもらいにいったら、よくわからないので産婦人科の先生に聞いて、と言われた」
といった声をここ数年、妊婦さんから聞くことが増えました。
(歯医者で薬出せないって言われたけど、そんなの以前はフツーに出してたよな)、と思いながら患者の相談にのることが多いのです。
私の考えでは、近年インターネットで薬のことを調べてから医者にかかる人が増え、内科や耳鼻科で薬を出そうとすると「その薬本当に安全なんですか」と妊婦さん自身が医者に問い合わせることが多くなったためだと思います。
全く副作用のない薬など、この世に存在しません。ほとんどすべての医者は「経験的に安全」として処方しているだけで、本当に安全かどうかは保証できません。産婦人科の私だって、100%安全であると断定できません(が、そこらへんは、問い合わせた本人の顔色を見ながら、納得できるように説明しています)。
診察室に風邪で薬をのんだほうがいいかと相談に来ておいて「薬の副作用が心配だからやっぱりのむのは心配」という妊婦に、長い時間かけて話を聞いた後で「やっぱりやめとく」と処方されずに帰るケースもあります。
目の前の経験のある医師よりネットの情報が正しいと考えていらっしゃる方もいて(そんなに心配だったら薬なんか飲まんで、黙って寝といて!)と声をあげたくなることもあります。信じる信じないは本人の自由ですが・・・
ネットを調べれば、必ずどこかに薬の副作用のことは書いてあります。「薬って副作用があるんでしょう?」と医師に質問する患者の中で、どのくらいの頻度で起こるかについて理解できている患者は少ないです。内科や耳鼻科の先生も自信をもって答えられないから、産婦人科で聞いてくれと逃げてしまう。妊婦だから特別の扱いが必要なんだろう、という患者の考え方が、妊婦加算に反映されてしまっているのかと思います。
自分で自分の首を絞めている状態です。
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さて、妊婦加算は通常患者からの申告がなければ加算されませんが、妊娠していないのに「妊婦に間違えられた」人もいます。私の知人ですが、
「買い物でスーパーの店内を歩いていたら、知らないおばさんが近づいてきて『あなたもうすぐ予定日?いつごろなの?」と聞いてきた、私妊娠していないのに」と言っていたその女性は、おなかの皮下脂肪のめだつポッチャリ体型でした。