院長ブログ
気がつかない人々
2018年6月13日|院長ブログ
産婦人科医をしていて、妊娠や出産という自然現象は不思議なものだとつくづく思います。
その、不思議なものの一つが「陣痛が始まるまで妊娠に気づかなかった人」です。
陣痛が来る直前まで妊娠していたことに気づかず、ある日突然お腹が痛いと受診してその日にお産になる人がいます。
信じられないかもしれませんが、医療の発達した現代の日本でもいるのです。
私がクリニックを開業してからは、「陣痛が始まるまで妊娠に気が付かない」というケースはありませんでした。(直近の症例はプライバシーの点でお話できませんが)
私が勤務医をしていた7年前くらいまでは、1~2年に1回はそういうお産がありました。
昔(15年くらい前)、私が病院で担当した、22歳の女性。
その人はある日、自宅でお腹が痛くなってきました。
じっとしていたら、
「股の間から何か出てきた」そうです。
我慢できなくなって病院にクルマで向かったのですが、病院到着直前、クルマの中で赤ちゃんが生まれてしまいました。私が病院にいると、まだへその緒がついた赤ちゃんとお母さんが病棟に大急ぎで運ばれてきました。
後で本人に話を聞くと、お産になるその日まで、ガソリンスタンドでパートの仕事をしていたそうです。
また別のケースでは、お腹が痛くなったので外科の病院に行った女性がいました。
おなかが張っているので便秘かと思い、浣腸をしようとした外科の先生は、規則正しい下腹部の張りに
(もしや?)と思い超音波の検査をしました。
すると、お腹の中に胎児の体が確認できたのです。
すぐに私のいる産婦人科に送られて来ましたが病院大騒ぎのうちにお産になりました。赤ちゃんは無事でした。
このように今までどこの産婦人科の妊婦検診も受けたことがなく、陣痛がはじまってからいきなり病院にやってくる人もいるのです。
妊婦で初期からつわりひどくて7週頃からぐったりしている人など診察しているので、ふつう、生理が3ヶ月来なかったら変だと思うだろうけどなあ、と思います。
妊娠していたことが、わからないはずはないだろう?と思うのですが、
私が考えるに「出産直前まで妊娠に気づかなかった人」にはこういう人たちかと思います。
1)妊娠かもしれないとウスウス感づいていたが、バレると大変だし、騒ぎになるから気が付かないフリをしていた人。
2)知能の低い人で、なんとなく妊娠してしまい、どうしたらいいか考えもせずになんとなくお腹が痛くなってきた人。
3)知能は正常だが本当に妊娠に気付かなかった人。
お産は自然現象で、天気といっしたょで、予想しなかったことが起こること、本当にあります。
お産の世界は奥深いと思っています。